大阪地方裁判所 昭和44年(ワ)65号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕(二) 休業損 金九〇〇、〇九〇円
原告は、父巴里俊夫の経営する巴里紡績株式会社の取締役営業部長であり、同社は資本金四〇〇万円で監査役を除く重役はすべて家族が占める同族会社である。原告は本給月額一〇五、〇〇〇円で内控除すべき所得税四、九九〇円であり、事故後前記昭和四三年五月までは治療経過からみても欠勤せざるをえず、その間昭和四二年九月分以降の給料の支払をうけることができなかつた。(同年八月分の給与を受けたことは原告の自認するところである。)
ところで被告は、原告の給与のうちには、取締役としての報酬と業務の対価としての給与を含み、休業損の対象は後者についてのみであるから、前者は支給されている筈であると主張する。
取締役の報酬は、休業と関係なく支給されるものとは必ずしも言えず、非常勤重役や社外重役と称せられる者について欠勤の有無が関係しないから、休業損が生じない場合がありうるにすぎない。要は会社の組織、他の重役の取扱い、会計上の処理などから判断しなければならない、原告の場合勤務会社が小企業で、給与は一定額であり、営業部長という地位からさ程高額であるともいえず、現に欠勤したことにより支給していないことから労務の対価と考えるべきである。
ちなみに、原告の月収は税金を控除したものとすべきである。
なぜならば、原告の実質的な収入は税額を控除したものであり、一定の必要経費として差し引くのが公平上当然である。かりに控除しないものとすれば、本件損害金については所得税法上非課税であり、損害金となつた故に税額相当分を被害者に利得させ、不公平のそしりを免ぬがれず、高額所得者が被害者となつた場合を考えればなおさらである。
そこで、原告の休業損は、一〇〇、〇一〇円の九カ月で金九〇〇、〇九〇円である。昭和四三年六月分以降の休業損は認めない。(藤本清)